【学会参加報告】情報処理学会 第63回UBI研究会@豊橋技術科学大学

August 27, 2019 Yuuki Nishiyama 0 Comments

2019年8月26日(月)〜27日(火)に豊橋技術科学大学で開催された情報処理学会 ユビキタスコンピューティングシステム(UBI)研究会に参加。今回は、高齢社会デザイン研究会と同時開催と言うことで、フィンランドで関わったパーキンソン病患者のトラッキングシステムに関する研究をライトニングトークを行った。

はじめに

名古屋大学の米澤先生にお誘いをいただき、学部の時からお世話になっている、第63回UBI研究会でライトニングトークを行った。帰国報告も兼ねて、知り合いの先生方と議論できる機会を得ることができたのは大きかった。

会場

会場は愛知の豊橋技術科学大学。新幹線の豊橋駅からバスで30分程で行ける。慶應大学出身の大村先生もいらっしゃるので、良く名前を聞く大学ではあったが初めての訪問。キャンパスが郊外にあるので少し移動が大変だが、広々としたキャンパスで研究に集中できそう。周辺の環境はSFCと近い?研究発表は、最近リニューアルした図書館のパブリックスペースで行なった。

発表内容

ライトニングトークでは、フィンランドで関わっていた、ゲーミフィケーションを用いた、投薬情報とパーキンソン病症状の実環境トラッキングの開発について発表を行った。10分間と非常に短い時間なので、研究の内容と言うよりかは、国を跨いだ評価実験(フィンランドとイギリス)や、オープンソースでガンガン研究を進めるところ、定量評価・定性評価のバランスなど、日本の研究コミュニティでも参考になることが多かったのでそれらを共有。

基調講演

基調講演は名古屋大学の間瀬先生(「ライフログを用いた医療介護におけるe-コーチング」)と豊橋技術科学大学の寺嶋先生(「高齢化社会に向けての生活支援ロボットの開発 ー機械制御とAIの融合に向けてー」)、と同じく豊橋技術科学大学の岡田先生(「ソーシャルなロボットにむけた関係論的なアプローチ」)の発表があった。

間瀬先生

間瀬先生はUbicomp@Osakaのジェネラルチェアをされた方で、Ubicomp界隈では重鎮。ATR(国際電気通信基礎技術研究所)出身でマルチモーダルコミュニケーションやユビキタス体験メディア、人間支援システムの専門家(間瀬研究室のウェブページ)。今回の講演は、「ライフログ」と「e-コーチング」という事で、自分の研究テーマと近くかなり刺激になった。様々な便利ツールやライブラリ(例えば、ある動作を検知するアルゴリズムなど)はできるようになったので、それらをさらに抽象化して、個人のセンシング・介入から集団(その内側の人間同士の関係性も含めて)のセンシング・介入を実現できないか?と言う分野が今後発展するのではと言うお話。一つの例として、「コーチング」が挙げられていた。コーチングはティーチング違い、クライアントが知識を持っていて、コーチが考え方の方向やなど新しい視点や方向修正の機会を与える仕事。良いコーチはその伝え方やタイミングなど、それらを個人に最適化して提供している。確かに、しっかり考えるとコーチングの自動化にはまだまだ多くの課題や可能性が秘められている気がする。博士論文の時に「ゲーミフィケーションを用いたチームの行動変容」という研究を行なったが、「社会性」という意味ではかなり面白いテーマ。この文脈で言えば、集団に対するコーチングを行なったとも言える(被験者からのフィードバックに応じて介入方法の調整はしていないので、この時点ではまだ一方方向の介入だけど、、)。コーチングの分析を考えると、もっと人数を最小単位にして、それぞれの関係性や環境・情報の提示方法やタイミングなどの詳細な分析・実験プラットフォームを作っても面白いかも。

岡田先生

実は数年前に、岡田先生の「弱いロボット」の本を購入したことがあり、楽しみにしていた講演。一般的なロボット(自動運転車、歩行ロボット、ごみ収集ロボなど)は非常に強がりなロボットでロボット自身で完璧に全てをこなすことが求められる。岡田先生の発表は、あえてそのロボットの「弱さ」を見せることで、人間がそれらの弱い部分を補完し、信頼関係や愛着みたいなモノがわくのでは無いか?と言うところがスタートポイント。実際に、初めのハンドシェイクの部分では非常に愛着やロボットを助けることができると言う結果ができている。一方で、「自分の子供」であれば、辿々しい動作や言葉であっても飽きずに対応できるが、ロボットの場合は、同じアクションを続けるのは確実に飽きることが容易に想像できる。一度だけ触れるロボットであれば良いが、ずっと生活をともにするロボット(例えば、ルンバやGoolge Home)に現在の弱いロボットは提供できるのか?子供の場合は、「成長する」ことが前提条件としてあるので、一回うまく行ったからと行って、それが続くとは言えない。最後の方で見せてくれた、自動運転車の自信が無い時(精度が低い時)は正直にその状態を色や表情で示してくれるのは、面白いアイディアな気がする。この場合であれば、弱みを見せてくれた方が嬉しいし、うざいと感じることは無い気がする。その違いは何か?擬人化を「車=大人」、「辿々しいニュース読み上げシステム=子供」として人間に伝わっているから?

研究発表

その他の研究発表は、UBI側は行動認識とその関連研究が多いイメージ。行動変容・パーソナライズ・ソーシャライズと言うキーワードが招待講演等で良く聞かれた印象があるが、今回の発表ではあまり多くなかった。行動変容系のテーマは、荒川先生が主催している行動変容系の研究会に流れているのかな?深層学習を絡めた研究が多くあるが、使わなくても解ける問題に適用しているのもあり、「何故、深層学習を使うのか?」を論文にするには考えた方が良い印象。井上先生の研究室で行なっている、ラベリングツール系の研究は自分の研究とも少し関係があるので、継続的に追っていきたい。

次回予定

次回の情報処理学会ユビキタスコンピューティングシステム研究会(UBI)は、12/10-11に淡路島で開催。

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